なぜ日本人は投資をしないのか?その背景と未来の展望
日本人の投資人口の少なさは何故なのか。日本社会では、節約や貯蓄が重んじられ、安定した将来のためにお金を確保することが一般的です。そのため、投資のリスクを取ることよりも、安全な貯金や預金を好む傾向が強いのです。さらに、投資に関する知識や教育が不足していることも、投資を避ける一因となっています。このような状況下で、日本人の投資意識を高め、資産形成につなげるためには、投資に対する理解と教育の充実が必要不可欠です。
日本人はなぜ投資をしないのか
日本における投資人口の割合は、世界的に見ても低い水準にあります。これは、日本人の投資に対する消極的な傾向やリスク回避志向が背景にあるとされています。以下に、その理由と世界的な投資状況との比較を示します。
リスクが怖い
日本人の多くはリスクを避ける傾向があります。これは文化や教育、経済環境などの要因によるもので、安全を重視する傾向が強いです。そのため、投資にはリスクが伴うことが一般的に認識され、多くの人が避ける傾向にあります。
知識がない
投資に関する教育や情報が不足しているという側面もあります。日本の教育システムでは、投資や金融に関する基本的な知識が不足していることが指摘されています。また、メディアでも投資に関する情報が不十分であることがあります。
低金利の環境が影響
長らく低金利が続いており、銀行預金などの安全な選択肢でも収益が期待できない状況が続いています。これが投資への関心を低下させる一因となっています。
周りの目が気になる
日本社会では、失敗を避けることが重視される傾向があります。そのため、家族や周囲の期待に応えようとするプレッシャーが投資への積極性を抑制する場合があります。
世界的に見ると、投資は経済成長や資産形成の重要な手段として認識されています。たとえば、アメリカや中国など他の先進国では、投資への参加率が高く、個人投資家が多数存在します。これに比べて日本では、投資への関心や参加率が低いとされています。
このような背景から、日本は「投資後進国」として位置付けられることがあります。投資の重要性を理解し、適切なリスク管理を行いながら、投資に対する認識を改善することが、日本の経済や個人の資産形成にとって重要とされています。
若者から投資人口が増え始めたのはなぜか
若者の投資人口が急増した背景には複数の要因が絡んでいますが、特に新型コロナウイルスの影響が大きいと考えられます。以下に、その要因を詳しく解説します。
オンライン化の進展
新型コロナウイルスの流行により、外出自粛やリモートワークなどの影響でオンラインでの活動が一層促進されました。これにより、投資に関する情報収集や取引がオンライン上で行われるようになり、若者たちもオンライン上での投資活動に参加しやすくなりました。
情報のアクセス性の向上
インターネットやSNSを通じて情報が簡単に入手できるようになったことも、若者の投資への関心を高める要因の一つです。著名人やインフルエンサーによる動画サイトやSNSでの情報発信が増え、投資に関する知識やノウハウが広く共有されるようになりました。
経済的な不安感
新型コロナウイルスの影響で経済不安が高まり、若者たちが将来の収入や資産形成に対する不安を感じるようになったことも投資への関心を高めた要因です。将来の収入や老後資金を確保するために、若者たちが早期から資産形成に取り組む姿勢が強まったと考えられます。
少額投資商品の普及
投資信託などの少額投資商品が若者向けに広く提供されるようになったことも、若者の投資参加を促進する要因です。これらの商品は少額から始めることができ、リスクを分散しやすいため、若者にとって手軽に始められる投資手段として魅力的です。
これらの要因が重なり、若者の投資人口が急増したと考えられます。ただし、投資はリスクが伴うため、適切な知識や情報収集、リスク管理が重要です。若者たちが投資に取り組む際には、十分な準備と慎重な判断が求められます。
日本人とアメリカ人の投資人口の割合は
日本人と米国人の金融資産の保有構成には、大きな違いがあります。
日本人の金融資産の保有構成
日本人の金融資産は、「現金・預金」が約54%、「株式・投信」が約14%という構成です。この構成から分かるように、日本人は比較的安全な資産、特に現金や預金を中心とした保守的な投資を好む傾向があります。これは、日本のリスク回避志向や安全志向の影響が反映されています。また、低金利政策が続いていることも、預金などの安全な選択肢が魅力的な選択肢となっている一因です。
米国人の金融資産の保有構成
米国人の金融資産は、「株式・投信」が51%と最も大きな割合を占めています。米国の経済や金融市場が成長性が高く、株式市場が活発であるため、投資家にとって株式や投資信託が魅力的な選択肢となっています。また、米国では企業の株式を保有する文化が根付いており、個人投資家も積極的に株式市場に参加しています。
日本人はお金の話はタブーの傾向が未だにある
日本において「お金」の話しは一般的にタブーとされ、公の場での議論が避けられる傾向があります。これは、日本社会において「お金」に関する話しはプライバシーの範囲に入ると考えられ、個人的な問題として扱われることが一般的であるためです。また、投資教育を受ける機会も十分ではなく、多くの人々が金融知識や投資に関するスキルを身につける機会に乏しい状況があります。
しかし、近年では日本の金融教育の充実が求められており、2022年度からは高校の家庭科の授業で「資産形成」についての金融教育が取り入れられることになりました。この取り組みは、若者たちが将来の生活や経済的な安定を考える上で重要なスキルを身につけることを目指しています。
ただし、このような変化に対しては未だ否定的な意見も存在します。一部の人々は、金融教育が適切に行われない場合にはリスクが伴う可能性があると懸念しており、また、個人の金融状況や家計に関する情報が適切に保護されない場合にはプライバシーの侵害につながる可能性も指摘されています。
公的年金制度が投資を遠ざけていた
公的年金制度が充実していることは、日本における投資意識やリスク回避の傾向に影響を与えています。以下では、公的年金制度の充実が投資意識に及ぼす影響と、イギリスの例を交えながら解説します。
公的年金制度の充実と投資意識
日本の公的年金制度は、国民の老後の生活を支える重要な要素です。この制度により、定年後に受け取れる老齢年金が保障され、安定した収入源を提供します。このような充実した公的年金制度があるため、多くの日本人は将来の生活について比較的安心感を持っています。そのため、投資やリスクを伴う資産運用への必要性を感じにくく、保守的な資産形成を選択する傾向があります。
イギリスの例
イギリスもかつては公的年金制度が充実しており、国民の高齢化に備えた年金支給が行われていました。しかし、高齢化の進行や財政上の問題により、公的年金制度が縮小していく過程がありました。この変化を見越し、イギリスでは積極的に私的年金制度を整備し、個々の人々が自ら老後の備えを行うことを促進しました。
意識改革と私的年金
イギリスの例から、公的年金制度の縮小や変化に備えて、個々の人々が自ら老後の備えを行う必要性が浸透しました。この意識改革により、私的年金や個人年金への関心が高まり、投資や資産形成に対する意識も変化していきました。将来の不安を解消するために、個々の人々が積極的に資産形成や投資を行うようになったのです。
公的年金制度の充実は、安心感を提供する一方で、投資意識やリスク回避の傾向を強化する要因となります。しかし、将来の変化や制度の縮小に備えて、個々の人々が自ら老後の備えを行う意識改革が必要です。私的年金や投資を活用して、将来の安定した生活を確保するための取り組みが求められます。
投資に非課税制度がなかった
投資による非課税制度が日本に導入される前は、投資によって得た利益に対しては通常の所得税が課税される仕組みでした。このため、多くの人々が投資を敬遠し、資産運用に積極的に取り組むことが少なかったと考えられます。2013年12月まで、投資による利益の非課税制度は日本には存在しておらず、投資に対するリスクと税金負担が抑制要因となっていました。
しかし、2014年1月に一般NISA(少額投資非課税制度)が導入され、投資による利益が一定の範囲内で非課税となる制度が始まりました。この制度の導入により、投資へのハードルが下がり、多くの人々が資産運用に関心を持つようになりました。一般NISAでは、株式や投資信託、ETFなどの金融商品を対象として、特定の範囲内で得られた利益が非課税となります。
さらに、2024年からは新NISAも始まり、これは従来の一般NISAよりも対象となる金融商品の種類や非課税枠が拡大され、無期限の非課税制度となりました。これにより、より多くの人々が長期的な資産形成を目指す中で、非課税制度の恩恵を受けることが可能となりました。
しかし、制度が導入されたからといって、一気に投資への需要が急増したわけではありません。特に、投資や資産運用に関する教育を受けていない世代にとっては、投資に対する理解や信頼の醸成には時間がかかることがあります。そのため、非課税制度の導入は投資への関心を高める一助となりつつも、投資に関する教育や啓発活動の重要性が依然として高いと言えます。
はじめての投資先について
日本では、投資先として人気のある選択肢は、安定的な資産形成を重視する傾向があります。ここでは、主な投資先として注目されている「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「新NISA(少額投資非課税制度)」について解説します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
掛け金の全額所得控除が受けられる:
iDeCoに支払う掛け金は、年間所得税や住民税の計算対象から控除されます。つまり、支払った掛け金の額全体が所得から差し引かれ、税金の軽減につながります。これにより、収入が増えることなく税負担を軽減することが可能です。
利息・運用益が税制優遇される:
iDeCoで運用された資金が利益や運用益を生み出した場合、これらの収益に対しても税制上の優遇が適用されます。つまり、利息や運用益が生じた場合でも、その収益に対する課税が軽減されるため、実質的な資産形成効果が高まります。
一時金の受け取りは退職所得控除が受けられ、非課税となる:
iDeCoからの一時金の受け取り時には、一定額まで非課税の特典があります。具体的には、退職所得控除が適用され、一時金を受け取った際の一定額までが非課税とされます。これにより、将来の老後の資金受給時にも税金の負担が軽減され、安定した生活を送るための資金を確保しやすくなります。
以上の3つの税制メリットが、iDeCoを他の資産運用の投資先と比較して魅力的な選択肢として浮上させています。iDeCoでは、積立時、運用時、受取時において税制上の優遇を受けられるため、将来の老後の生活資金を安定的に形成することができるというメリットがあります。iDeCoについての記事はこちら
新NISA(少額投資非課税制度)
成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能に:
新NISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠の2つの枠を併用することが可能です。成長投資枠は、一度に大きな金額を投資することができる枠であり、つみたて投資枠は定期的に少額を積み立てることができる枠です。これにより、投資家は自身の投資スタイルや目標に合わせて適切な枠を選択し、柔軟な資産形成が可能となります。
年間投資上限額が最大360万円に拡大:
新NISAでは、成長投資枠が年間240万円、つみたて投資枠が年間120万円年間の投資上限額が最大360万円に拡大されています。これにより、投資家はより多くの資金を非課税で運用することができます。高い上限額が設定されることで、将来の資産形成や老後の生活資金の準備に向けてより積極的に投資を行うことが可能となります。
生涯非課税限度額が最大1,800万円で新設:
新NISAでは、生涯の非課税限度額が最大1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)に設定されています。これは、投資家が一生涯において非課税で得られる利益の上限額を示しています。投資家はこの限度額内で利益を得ることができるため、将来の資産形成や生活の安定に向けて効果的に資金を運用することができます。
非課税保有期間の無期限化:
新NISAでは、非課税保有期間が無期限となっています。これは、投資家が非課税で運用した資産について、一定の期間を超えても非課税の恩恵を受けることができることを意味します。投資家は資産を長期間にわたって保有することで、将来の利益を最大限に伸ばすことができます。
制度の恒久化:
新NISA制度は、恒久的な制度として設計されています。つまり、一定期間で終了することなく、将来も継続して運用されることが予定されています。これにより、投資家は将来の資産形成や生活の安定を見据えて、長期的な視点で資産を運用することができます。
以上の5つのポイントから分かるように、新NISA制度は投資家にとって非常に魅力的な制度であり、将来の資産形成や生活の安定に向けて効果的な選択肢となっています。新NISAの記事はこちら
投資の注意事項について
資産運用を始める際に重要なのは、まずは自身の興味や目標に合った投資対象や運用方法を理解し、リスクや費用などのポイントを押さえることです。以下に、初心者が資産運用を始める際のポイントをまとめます。
興味のある分野で始める
初めての資産運用では、興味のある分野や業界に投資することから始めると良いでしょう。自分が関心を持っている分野なら、情報収集や投資先の選定が楽になります。
リスクを理解する
投資にはリスクがつきものです。投資先や運用方法のリスクを理解し、自身のリスク許容度に合った選択をすることが重要です。リスクに対する理解を深めるために、リスクマネジメントについて学ぶことも有益です。
負担のない金額から始める
初めての投資では、負担のない金額から始めることが大切です。自分が失っても問題のない範囲で投資を行い、リスクに慣れていくことが重要です。少額から始めることで、失敗しても大きな影響を受けずに済みます。
長期・分散投資を意識する
長期間にわたって資産を運用し、リスクを分散させることが安定的な資産形成の基本です。新NISAやiDeCoなどの制度を活用し、長期間にわたる分散投資を行うことで、安定的な資産増加を目指すことができます。
情報の収集と学び続ける姿勢
投資は常に変化する市場環境に影響されます。初心者でも、投資に関する情報を積極的に収集し、最新のトレンドや市況を把握することが重要です。また、投資に関する知識を定期的に更新し、学び続ける姿勢も大切です。
以上のポイントを踏まえて、少しずつ資産運用に取り組んでいくことで、将来的により豊かな生活を送るための基盤を築くことができます。初めての投資でも、着実なステップを踏んでいくことが重要です。
まとめ
日本人が投資を避ける理由や世界との投資人口の差、新NISAやiDeCoの利用、そして投資の注意点について、以下に詳しく解説します。
日本人が投資を避ける理由と世界との投資人口の差
保守的な国民性
日本人は保守的で安全志向な傾向があり、リスクを取ることを好まない傾向があります。これは、長期間にわたって安定的な資産形成を求める結果として投資を避ける傾向につながっています。
教育の不足
日本では投資に関する教育が不十分であり、一般的な教育課程においても投資や資産運用に関する知識を得る機会が限られています。
公的年金制度の充実
日本では公的年金制度が充実しており、老後の生活を安心して送るための手段として多くの人が公的年金に頼る傾向があります。
世界の他の国々と比較すると、日本の投資人口の割合は圧倒的に低いです。特に米国や欧州では投資文化が根付いており、多くの人々が積極的に投資を行っています。
新NISAやiDeCoの利用
新NISA
新NISAは、成長投資枠とつみたて投資枠の2つの枠からなり、最大で360万円まで非課税で資産運用ができる制度です。将来の資産形成や老後資金の準備に活用することができます。
iDeCo
iDeCoは、個人型確定拠出年金の略で、将来の年金受給額を増やすために積み立てることができる制度です。積立金額の全額が所得控除の対象となり、税制面での優遇措置があります。
投資の注意点
リスクの理解
投資にはリスクが伴います。投資先や商品のリスクを理解し、自身のリスク許容度に合わせて適切な選択をすることが重要です。
分散投資
リスクを分散させるために、複数の投資先や商品に分散投資することが重要です。これにより、リスクを均等に分散させることができます。
情報収集と学習
投資に関する情報を積極的に収集し、常に市場の動向やトレンドを把握することが重要です。また、投資に関する知識を継続的に学習し、自己啓発を行うことも大切です。
最後に
日本人が投資を避ける背景には、保守的な国民性や投資に関する教育の不足、公的年金制度の充実などがあります。
しかし、新NISAやiDeCoなどの制度を活用することで、積極的な資産形成や老後の備えを行うことが可能です。投資を始める際にはリスクの理解と分散投資の重要性を認識し、情報収集と学習を行うことが肝要です。将来の安定した生活を目指すために、投資に対する理解と積極的な取り組みが求められています。