プライム・スタンダード・グロース市場とは?初心者でも分かる3つの区分について
株式投資を始めたばかりの方の中には、「東証プライム」「スタンダード」「グロース」といった言葉を耳にしたことがあるものの、その違いや投資の際にどう関わるのかが分からず、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。どの市場に投資すべきか、各市場の特徴を理解するのが難しいと感じている方も少なくありません。
この記事では、そんな投資初心者の皆さんの悩みを解消するため、東京証券取引所(東証)の3つの市場区分「プライム」「スタンダード」「グロース」の特徴を分かりやすく解説します。また、各市場区分がどのような投資家に向いているか、具体的な投資戦略についてもアドバイスしますので、ぜひ参考にしてください。
東証の3つの区分について
東京証券取引所(東証)の区分には、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つがあります。それぞれの特徴を説明します。
プライム市場
プライム市場は、東京証券取引所が2022年4月4日から導入した新市場区分の中で最上位の市場です。この市場には、流動性やガバナンス水準、経営成績や財政状態などに一定の基準を設け、それをクリアした企業が上場することが許されます。ただし、当面は基準を満たしていない企業でも「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出することで、暫定的にプライム市場に残れることができます。
プライム市場への上場基準には、以下のような基準が設けられています。
- 株主数が800人以上
- 流通株式数が2万単位以上
- 流通時価総額が100億円以上
- 最近1年間の利益合計が25億円以上
東証の従来の市場区分が、市場第一部、市場第二部、マザーズ、ジャスダック(スタンダードおよびグロース)であったのに対し、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3市場に区分変更が行われました。
「プライム市場」は、世界中の投資家と積極的にコミュニケーションを図りながら成長を目指す企業向けの市場です。この市場に上場する企業は、規模が大きく、しっかりとした成長戦略を持っています。再編前の市場には、あまり流動性がない企業や時価総額が小さい企業も含まれていましたが、この新しいプライム市場では、企業の成長と価値向上を強く意識した基準が設けられています。プライム市場に上場する企業は、国内外の投資家からも高い支持を得ることが期待されているため、安心して投資できる先として注目されています。
スタンダード市場
スタンダード市場は、東京証券取引所が2022年4月4日から導入した新市場区分の一つで、プライム市場とグロース市場の中間に位置する市場です。この市場は、投資家にとって十分な流動性(つまり、株式の売買がしやすいこと)と良好なガバナンス水準を持つ企業を対象としています。
- 株主数が400人以上
- 流通株式数が2千単位以上
- 流通時価総額が10億円以上
- 最近1年間の利益合計が10億円以上
「スタンダード市場」は、プライム市場ほど大きな企業ではないものの、安定した成長を遂げている企業が集まる市場です。この市場に上場する企業は、流動性が高く、ガバナンスの面でもしっかりとした基準をクリアしています。投資家にとっては、リスクを抑えつつ、安定した投資ができるというメリットがあります。スタンダード市場は、安心感がある投資先を求める人に適した市場です。
グロース市場
グロース市場は、東京証券取引所が2022年4月4日から導入した新しい市場区分の一つで、比較的規模の小さいベンチャー企業や成長性が高い企業が参加する市場です。新市場区分では、企業の流動性やガバナンス水準、経営成績や財政状態などに一定の基準が設けられ、それに基づいて「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに区分されます。
グロース市場は、高い成長可能性を持つ企業が集まる市場です。この市場に上場する企業は、将来的な成長が期待されるベンチャー企業や新興企業などが多いです。
- 株主数が150人以上
- 流通株式数が1千単位以上
- 流通時価総額が5億円以上
- 最近1年間の利益合計が5億円以上
「グロース市場」は、その名の通り成長性の高い企業が集まる市場です。まだ規模は小さいものの、大きな成長ポテンシャルを持っている企業が上場しています。そのため、投資家にとってはリスクも高いですが、成功すれば大きなリターンを得られる可能性も秘めています。成長企業を応援したい人や、大きなリターンを狙いたい人に向いている市場です。
これらの区分を導入する主な理由の一つは、東証が従来の区分では投資家にとってわかりにくく、利便性が低かったということです。また、従来の区分では上場企業に持続的な企業価値向上の動機付けが不十分であったため、新たな区分が導入されました。
市場を区分けした理由
東証が市場区分を明確にする主な理由は、従来の市場区分が曖昧であり、投資家にとって利便性が低かったことや、上場企業の持続的な成長を促す動機付けが不十分だったことです。
従来の市場区分では、市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQといった複数の市場があり、それぞれの位置づけやコンセプトがわかりにくかったため、投資家が市場を理解するのが難しかったです。
また、上場時に基準をクリアしていても、上場後の企業努力が不十分で、基準を満たさない企業が存在していました。特に、市場変更によって市場第一部に上場するハードルが低いことや、直接上場と市場変更をした企業が同じ市場区分に混在することで、市場の質が低下し、投資家にとって魅力的な市場として認識されない課題がありました。
このような課題を解決するため、東証はプライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つの市場に区分を変更しました。各市場のコンセプトが明確になり、上場企業が持続的な成長に向けた努力を促されることで、投資家にとってもより理解しやすく、信頼できる市場環境が整備されることが期待されています。
プライム市場に上場するメリット・デメリット
メリット
プライム市場への上場には、企業にとって以下の3つの主なメリットがあります。
企業価値が向上する
プライム市場では、東証一部に比べて上場基準や上場維持基準が厳しくなっています。そのため、プライム市場への上場は企業にとっての社会的信用が高まり、企業価値の向上につながります。高いガバナンス水準やサステナビリティへの取り組みが求められるため、これらに積極的に取り組むことで、海外の投資家や企業からの信頼を獲得することも期待できます。
TOPIXに採用される
TOPIXは東証が公表している株価インデックスであり、プライム市場の全上場企業の株式時価総額をポイントにしています。TOPIXに採用されることで、企業の国内外での認知度が上がり、より多くの投資家からの注目を集めることができます。また、TOPIX連動型のインデックスファンドからの投資も期待できます。
幅広い資金調達が可能になる
プライム市場への上場はハードルが高いため、上場企業にはより大きな社会的信用が与えられます。その結果、銀行からの融資を受けやすくなり、さらにTOPIXに名前が連なることで、国内外の機関投資家からの投資や日銀からの買い入れ(TOPIX ETF)も期待できます。
デメリット
プライム市場への上場には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。
上場後も継続した企業努力が求められる
プライム市場では、上場時だけでなく上場後も高い基準を維持する必要があります。特に、サステナビリティや社会貢献活動など、持続可能な経営に向けた努力が求められます。これにより、企業は常に進化し続ける必要があります。
上場や上場維持にコストがかかる
プライム市場への上場には高額な手数料が必要です。上場時の手数料や監査費用、上場維持のための年間手数料など、多くの費用が発生します。さらに、情報開示にかかるコストも増加する可能性があります。
開示しなければならない情報が多い
プライム市場に上場する企業は、他の市場よりもさらに多くの情報開示が求められます。特に、経営戦略やサステナビリティへの取り組みに関する具体的な情報が必要です。また、情報開示は日本語だけでなく英語でも行われる必要があります。
スタンダード市場に上場するメリット・デメリット
メリット
スタンダード市場への上場にはいくつかのメリットがあります。
コーポレート・ガバナンスや内部管理体制が整っている企業として認識される
スタンダード市場に上場することで、企業のコーポレート・ガバナンスや内部管理体制が整っていると認識されます。これは投資家や株主にとって信頼性が高いと見なされ、企業価値の向上や投資家からの支持を得る上で重要な要素です。
安定した収益基盤・財政状態を備えている証明になる
スタンダード市場では、上場時の水準が上場維持基準に適用されます。そのため、安定した収益基盤や健全な財務状態を維持している企業が市場に残ることが期待されます。スタンダード市場に上場している企業は、安定した経営実績を持っていると見なされ、投資家からの信頼を得やすくなります。
デメリット
スタンダード市場への上場にはいくつかのデメリットも考えられます。
プライム落ちのレッテルを貼られる
スタンダード市場は、プライム市場の基準を満たせずに移行せざるを得ない企業が選択する市場の一つです。このため、以前はプライム市場に上場していた企業がスタンダード市場に移行する場合、プライム市場に残れなかったというレッテルを貼られる可能性があります。投資家からの評価が下がる可能性があります。
上場維持基準を維持し続けなければならない
スタンダード市場に上場すると、上場維持基準を維持する義務が生じます。これは、上場時の企業価値や経営状態を維持することが求められます。日々の業務に加えて、上場維持基準をクリアするための努力や負荷が追加される可能性があります。
グロース市場に上場するメリット・デメリット
メリット
グロース市場に上場すると、以下のようなメリットが考えられます。
新興企業として認識される
市場区分の再編後、各市場区分のコンセプトが明確になったことで、グロース市場に上場しているだけで新興企業と認識されます。これにより、リスク許容度の高い投資家から資金が集まりやすくなります。
コーポレード・ガバナンスや内部管理体制が整っている企業として認識される
グロース市場に上場する企業は、コーポレード・ガバナンスや内部管理体制が整っていると見なされます。市場への新規参入や成長企業の支援を目的とした投資家からの注目を集めやすくなります。
デメリット
グロース市場に上場するデメリットもあります。
リスクを避ける投資家から嫌気される
グロース市場は新興企業中心の市場であり、その性質上、リスクを避ける投資家からは避けられる可能性があります。成長企業や新興企業への投資には、一定のリスクが伴うため、保守的な投資家からは選好されない傾向があります。
上場基準維持に奔走する可能性がある
グロース市場に上場する企業は、新規上場時と同等の上場基準を維持する必要があります。成長期の企業は急成長しているため、その中で上場基準を満たすための業務に奔走しなければならないことがあります。成長戦略と上場基準の両立は一定の難しさを伴うことがあります。
それぞれの区分の特徴と向いている人とは
プライム市場の特徴と向いている人
特徴:
プライム市場は、安定性が高く、国内外の投資家からの信頼も厚い大手企業が上場しています。長期的な成長を重視し、しっかりとした経営基盤を持つ企業が多いため、リスクを抑えつつ安定したリターンを期待できるのが特徴です。流動性が高く、株価の変動も比較的緩やかです。
向いている人:
安定した収益を重視する人や、長期的な視点で資産を増やしたい人に向いています。株式投資に不慣れな初心者や、リスクをあまり取りたくない人に最適な市場です。
スタンダード市場の特徴と向いている人
特徴:
スタンダード市場は、プライム市場ほどの規模や成長性は求められないものの、安定感のある企業が集まる市場です。中堅企業や成長途中の企業が多く、プライム市場よりも若干リスクが高い反面、成長性も期待できます。
向いている人:
やや高いリターンを狙いたい人や、成長途中の企業に投資したい人に向いています。少しリスクを取ってもいいという中級者や、成長ポテンシャルのある企業を応援したいと考える人に適しています。
グロース市場の特徴と向いている人
特徴:
グロース市場は、成長性の高い企業が集まる市場で、比較的規模が小さいスタートアップ企業などが多いです。リスクは高いですが、その分、大きなリターンを狙うことができるのが特徴です。株価の変動が激しいため、短期的なトレードを考える人にも注目される市場です。
向いている人:
リスクを取ってでも大きなリターンを狙いたい人や、成長企業を見極める目を持っている人に向いています。投資経験がある中級者以上の方や、積極的に資産を増やしたいと考えている方におすすめです。
まとめ
この記事では、東証の3つの市場区分「プライム」「スタンダード」「グロース」について、その特徴とそれぞれの市場に向いている投資家のタイプを解説しました。これらの市場を理解することで、自分の投資スタイルやリスク許容度に合った市場を選び、より効果的な投資を行うことができます。
これらの市場について理解を深めることで、自分に合った投資先を見つけることができるでしょう。投資初心者にとって「どの市場が自分に合っているのか」「リスクをどう考えるべきか」などの疑問があると思いますが、それぞれの市場の特徴を押さえることで、少しずつその答えが見えてくるはずです。具体的な投資戦略や、どの市場に注目すべきかについては、次の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
おすすめの記事: 「初めての株式投資!初心者が気をつけるべきポイントとは?」