オプション取引ってどんなもの?先物取引との違いを学ぼう
投資の世界に興味を持ち始めたばかりの初心者の方は、どのような投資手法が自分に合っているのか、どこから始めればいいのかと悩むことが多いかもしれません。
そんな悩みの中に、
- オプション取引ってなに?
- 先物取引との違いは?
という疑問をお持ちではありませんか?
投資の世界では、さまざまな商品や手法が存在しますが、中でもオプション取引と先物取引は特に人気の高い取引手法です。どちらも金融市場での価格変動を活用して利益を追求するものですが、その仕組みやリスク・リターンの特性には違いがあります。
オプション取引と先物取引の基礎知識や、投資初心者が知っておくべきそれぞれの特徴と違いを解説します。
オプション取引とは
そもそもオプションとは、「選択する権利」のことを言います。例えば、車にオプションパーツをつけたり、旅先の宿にオプションをつけて豪華にするなど、自分で選択することを意味します。
日経225オプション取引は、日経平均株価を対象としたオプション取引です。オプション取引では、「買う権利」または「売る権利」を売買します。具体的には以下の2つのオプションがあります。
- コールオプション:日経平均株価をあらかじめ決められた価格(権利行使価格)で「買う権利」です。
- プットオプション:日経平均株価をあらかじめ決められた価格(権利行使価格)で「売る権利」です。
オプション取引には「買い手」と「売り手」がいます。
買い手はオプションを購入して権利を手に入れます。そのために「プレミアム」と呼ばれるオプション料を売り手に支払います。
売り手はオプションを販売してプレミアムを受け取ります。プレミアムは売り手の利益です。
決済について
オプション取引は、満期日までに「反対売買」をして決済することができます。反対売買とは、買い手が購入したオプションを市場で売る(転売)か、売り手が販売したオプションを市場で買い戻す(買戻し)ことを指します。
買い手はプレミアムを支払うのみで、証拠金(保証金)の必要はありません。
売り手は、オプションを販売する際にリスクをカバーするために証拠金が必要です。
要するに、オプション取引は日経平均株価に基づいて、将来の株価の動きに対して「買う権利」または「売る権利」を売買する取引です。オプションを持つことで、将来の株価がどのように変動するかに応じて利益を得ることができますが、投資にはリスクも伴います。
オプション取引を「新作ゲーム機」で例えてみると
オプション取引の考え方を、ゲーム機を例にして説明します。
例:新作ゲーム機の予約
Cさんは、人気の新作ゲーム機が発売されることを知り、欲しいと思っています。しかし、現在のゲーム機の価格は5万円で、Cさんはすぐに購入する余裕がありません。Cさんは、2ヶ月後にゲーム機の価格がどうなるかを知りたいと思っていますが、値上がりしてしまうと困るので今すぐ買いたいわけではありません。一方で、ゲーム機の価格が下がってしまう可能性もあります。
そこで、Cさんは「2ヶ月後に5万円で新作ゲーム機を購入できる権利」を、手数料を支払って購入することにしました。これは、2ヶ月後に5万円でゲーム機を買うかどうかを決める権利です。
(1)ゲーム機の価格が上昇した場合
2ヶ月後、新作ゲーム機の価格は大人気で7万円に値上がりしていました。この場合、Cさんは5万円でゲーム機を購入できる権利を持っているため、7万円で購入するよりも、権利を行使して5万円で購入するほうが2万円お得です。Cさんはこの権利を行使して5万円でゲーム機を購入しました。
(2)ゲーム機の価格が下落した場合
2ヶ月後、Cさんの予想と反して新作ゲーム機の価格が4万円に値下がりしていました。この場合、Cさんは5万円でゲーム機を購入する権利を行使せず、店頭で4万円でゲーム機を購入しました。ただし、この場合「5万円でゲーム機を購入できる権利」を得るために支払った手数料は無駄になってしまいました。ただし、Cさんの損失は、5万円で購入した場合の1万円の差額よりは少なくなりました。
このように、新作ゲーム機を例にしても、オプション取引は将来の価格変動に対して柔軟に対応できる方法であることがわかります。Cさんは、オプションの権利を使って価格上昇に対してリスクを減らし、価格が下がった場合でも損失を最小限に抑えることができます。
オプション取引の特徴
オプション取引にはいくつかの特徴があります。以下でそれぞれの特徴について分かりやすく説明します。
レバレッジを効かせられる
オプション取引では、金融商品(例:株式)を将来買う権利や売る権利を表すオプションを購入します。このオプションを買う際の費用(プレミアム)は、実際の金融商品の価格に比べて低額です。そのため、少ない資金で大きな取引に参加できるため、レバレッジ(てこの作用)を効かせることができます。
例えば、ある株式が1株1万円だとします。オプション取引では、1万円で株を買う権利(コールオプション)を500円のプレミアムで購入したとします。その後、株価が1万円から1万5千円に上昇した場合、コールオプションを行使して5千円の利益を得られます。500円の投資で5千円の利益が出るため、レバレッジを効かせることができるのです。
損失が限定される(買い手の場合)
オプション取引の買い手は、自分に有利な状況であるかどうかを見極めてから権利を行使することができます。このため、オプションで「買う権利」(コールオプション)を購入しても価格が下落した場合や、「売る権利」(プットオプション)を購入して価格が上昇した場合には、その権利を行使せずに放棄することが可能です。
権利を行使しない場合、買い手が受ける損失はオプションを購入するために支払った金額(プレミアム)のみです。このプレミアム以上の損失を被ることはありません。つまり、買い手は自分の投資リスクを限定することができるのです。
このように、オプション取引の買い手は、自分にとって不利な状況を避けて損失を限定できるため、予想が外れた場合でもリスクを最小限に抑えることが可能です。
証拠金が必要(売り手の場合)
オプションの売り手は、買い手が権利を行使した際に取引に応じなければなりません。そのため、売り手には無限大の損失リスクがあります。例えば、「売る権利」(プットオプション)を売っている場合、金融商品の価格がゼロまで下がると、損失が大きくなります。このようなリスクに対応するため、売り手は証拠金を証券会社に預ける必要があります。
証拠金が足りなくなると追加証拠金(追証)が求められます。
期限があるため塩漬けにならない
オプション取引には、権利行使の期限があります。このため、権利を保有したまま長期間塩漬けになることはありません。権利行使期限が近づくと、投資家は権利を行使するか放棄するかを選択しなければなりません。この期限があることで、投資資金を長期間動かせない状況を避けることができます。
これらの特徴を理解して、オプション取引を活用すると良いでしょう。リスクとリターンのバランスを考えながら、慎重に取引を行うことが重要です。
オプション取引の税金について
オプション取引によって収益が発生した場合、税金を支払う必要があります。この税金は「雑所得」として扱われ、20.315%の申告分離課税の税率が適用されます。具体的なプロセスを分かりやすく解説します。
税金の計算と申告
- 売買差益の計算: 1年間(1月1日から12月31日まで)の間に発生したオプション取引の売買差益(収益と損失)を計算します。
- 確定申告: 翌年の2月16日から3月15日までの期間内に、税務署やオンラインで確定申告を行います。
- 税率: 税率は20.315%の申告分離課税が適用されます。これは売買差益に対してかかる税金です。
損失が発生した場合
損失が発生した場合、確定申告を行うことで将来の税負担を軽減できる可能性があります。それは「損益通算」という制度に基づいています。
オプション取引で発生した損失と他の金融商品(たとえば日経225やFXなど)での利益を相殺できます。
例えば、オプション取引で10万円の損失が発生した一方で、FX取引で15万円の利益が出たとします。この場合、損益通算を適用すると、利益15万円から損失10万円を引いた5万円が課税対象になります。
このように、オプション取引で損失が発生した場合でも、確定申告を行うことで他の取引の利益と相殺し、税負担を軽減することができます。確定申告は正確な税金計算のためにも重要ですので、忘れずに行いましょう。
先物取引との違いは
オプション取引
- 特徴:オプション取引は「金融商品を決めた価格で売買できる権利」を買い手に提供する取引です。買い手はオプションの権利を行使するかどうかを選べます。
- 権利の選択:買い手はオプションを行使するかどうかを選ぶことができます。権利を行使しない場合は、契約を放棄して損失を軽減することができます。
- リスク:オプション取引は、リスクを軽減することができる一方、権利を購入するためのプレミアム(手数料)は失われることがあります。
先物取引
- 特徴:先物取引は、将来の売買を約束する取引です。将来の特定の期日に、事前に決めた価格で売買を行うことを約束します。
- 契約の義務:先物取引では、契約した期日が到来したら、買い手と売り手は約束した価格で取引を行う義務があります。
- リスク:市場価格が約束した価格と異なる場合、損失が生じる可能性があります。買い手と売り手は価格変動によるリスクを受け入れる必要があります。
違いのまとめ
オプション取引は「権利」を扱うため、買い手は期日が到来しても権利を行使するかどうかを選べます。先物取引は「約束」に基づく取引で、期日が来たら必ず取引を行う必要があります。
オプション取引は、リスクが高まる場合には権利を行使せずに放棄することで損失を軽減できます。先物取引は、契約に基づいて取引を行うため、リスクを避けることはできません。
このように、オプション取引と先物取引の主な違いは「権利の選択の自由」と「契約の義務」です。買い手がリスクに対して柔軟に対応できるのはオプション取引の利点です。一方で、先物取引は約束に基づいて取引を行うため、リスクを受け入れる必要があります。
「先物取引」と「オプション取引」どっちも活用しよう
「先物取引」と「オプション取引」は、どちらが儲かるかを一概に判断することは難しいです。どちらも適切な投資戦略を立てることで利益を上げることが可能ですが、特性やリスクが異なるため、投資家の目的やリスク許容度に応じた選択が必要です。
先物取引を活用したヘッジ取引
売りヘッジ
- 目的: 現物資産(例: 日経平均株価のETF)を保有している場合、値下がりリスクを軽減するための戦略です。
- 戦略: 日経225先物取引で売りポジションを持ちます。現物資産の価格が下がった場合でも、先物取引の利益で損失をカバーできます。
買いヘッジ
- 目的: 将来購入したい商品がある場合、購入前に価格が上昇した場合に備える戦略です。
- 戦略: 将来購入予定の商品(例: 商品先物や株式など)を先物取引で買いポジションを持つことで、価格上昇分をカバーできます。
オプション取引を活用した戦略
ロングストラドル
- 目的: 原資産の価格が大きく変動すると予測される場合にとる投資戦略です。
- 戦略: 権利行使価格が同じコール・オプションとプット・オプションを同時に買うことで、価格変動によって利益を得る可能性を持ちます。
- 効果: 権利行使価格よりも大きく価格が変動すれば利益を得ることができます。リスクを限定しながら利益を狙えるため、相場が大きく動くと予想される状況で有効です。
結論
「先物取引」と「オプション取引」を組み合わせることで、リスクヘッジや利益の最大化を図る戦略を構築できます。売りヘッジや買いヘッジを利用して現物資産のリスクを抑えることができ、ロングストラドルなどのオプション取引を活用することで損失を限定しながら利益を狙えます。
投資戦略の選択は、個人のリスク許容度や市場予想に基づいて行う必要があります。どちらの取引を選ぶかは、個々の投資目的や市場状況によって異なります。
まとめ
オプション取引とは
オプション取引は、原資産(株価指数や商品など)に対する売買権(コール・オプションまたはプット・オプション)を売買する取引です。コール・オプションは「特定の価格(権利行使価格)で原資産を買う権利」を、プット・オプションは「特定の価格で原資産を売る権利」を指します。オプションの買い手は、これらの権利を購入するためにプレミアムを支払います。
オプション取引のメリット
損失が限定されている(買い手の場合): オプションの買い手は、権利を行使しないことを選択できるため、損失はプレミアム(権利を購入するための費用)に限定されます。
- 多様な投資戦略: コールとプットを組み合わせるなどして、価格変動に対するリスクを抑えるヘッジ戦略や、相場の変動を狙った戦略など、さまざまな投資手法を活用できます。
- レバレッジ効果: プレミアムという比較的少額の費用で、原資産の価格変動に対する権利を得ることができるため、レバレッジ(てこ)効果によって大きな利益を狙えます。
オプション取引のデメリット
- プレミアムがコストとなる: 買い手はオプション購入の際にプレミアムを支払う必要があり、これは利益に対するコストとなります。
- 満期がある: オプションには期限(満期)があるため、期限内に価格が想定通りに動かなかった場合、買い手はプレミアムが無駄になる可能性があります。
- 売り手のリスクが高い: オプションの売り手は、原資産の価格が大きく変動した場合、無制限の損失リスクを負う可能性があります。
先物取引との違い
- 権利と義務の違い: オプション取引は買い手に権利があるが、義務はありません。一方、先物取引は売り手と買い手の両方が取引を行う義務があります。
- リスクの大きさ: 先物取引では価格が予想と逆に動くと大きな損失が発生しますが、オプションの買い手は損失がプレミアムに限定されているためリスクが低くなります。
- 取引の種類: 先物取引は原資産の将来の価格を予測して売買契約を結びますが、オプション取引は権利を売買するため、戦略のバリエーションが豊富です。
最後に
オプション取引は、リスクをコントロールしながらさまざまな投資戦略を展開できる柔軟性の高い取引手法です。買い手は損失がプレミアムに限定され、売り手と組み合わせた戦略によって幅広い相場環境に対応することが可能です。しかし、オプション取引はプレミアムがコストになる点や期限内に予想通りの価格変動がない場合の損失リスク、売り手の無制限のリスクなど、注意すべきデメリットも存在します。
一方、先物取引は価格変動に対する高いレバレッジを提供しますが、オプション取引と比較してリスクが大きくなる場合があります。
どちらの取引も一長一短がありますので、自身の投資目標やリスク許容度に応じて適切な取引戦略を選択することが重要です。また、これらの取引には専門的な知識と経験が求められるため、事前に十分な学習やリサーチを行うことをお勧めします。計画的な投資を通じて、オプション取引や先物取引のメリットを最大限に活用することが成功の鍵です。