配当利回りにだまされるな!高配当株の裏に潜むリスクと注意点
最近、株式市場では高配当銘柄が注目を集めています。配当利回りが高いと、投資家にとっては魅力的に感じられるかもしれませんが、その裏には様々なリスクが潜んでいます。本記事では、配当利回りに基づく株式投資の落とし穴と注意点について解説します。
配当金とは?
配当金とは、企業が利益の一部を株主に分配する現金のことです。株主は保有する株式数に応じて配当金を受け取ります。
具体例
たとえば、1株あたり10円の配当が出た場合、次のように配当金が計算されます。
100株持っている場合の配当金:10円 × 100株 = 1,000円
500株持っている場合の配当金:10円 × 500株 = 5,000円
配当金のメリット
株式投資で利益を得る方法には、株式の売買による売却益(キャピタルゲイン)だけでなく、株式を保有し続けて配当金を受け取る方法(インカムゲイン)もあります。
配当金の変動要因
- 企業の業績:業績が良ければ配当金が増えることもありますが、業績が悪化すると配当金が減少したり、無配当になることもあります。
- 経営方針の変化:業績が好転すると、無配当だった企業が配当を出し始めたり、配当金を増額することもあります。
配当金を受け取るための条件
配当金を受け取るためには、権利付最終日までに株主名簿に名前が記載されている必要があります。
権利付最終日:この日までに株を持っていると配当金を受け取る権利が確定します。
権利付最終日を含む3営業日前までに株式を取得しないと、株主名簿に名前が記載されないため、配当金を受け取ることができません。
仮に権利付最終日が5月31日だとすると、
5月31日までに株主名簿に名前が記載される必要があります。
株主名簿に名前が記載されるまでに3営業日かかるため、5月28日までに株式を購入する必要があります。
このように、配当金を受け取るためには、計画的に株式を購入することが重要です。
配当金の受取時期と決定プロセス
配当金の受取時期
配当金は、企業の決算が終了した後に株主へ支払われます。受取時期の具体的な流れは以下の通りです。
- 決算の後:企業は決算を行い、その業績をまとめます。
- 株主総会の開催:決算後に株主総会が開かれ、ここで配当金の有無や金額が決定されます。決算期は企業ごとに異なりますが、一般的に期末決算の2~3ヶ月後に株主総会が開かれます。
- 配当金の支払い:株主総会で配当が決定されると、その後に配当金が支払われます。
たとえば、3月末に決算を迎える企業の場合、配当金の受取時期は5月~6月頃になります。
配当の種類
- 期末配当:決算期末に支払われる配当で、多くの企業が年1回行います。
- 中間配当:期末配当とは別に、年度の途中で支払われる配当です。主に前期の利益余剰を財源とし、当期末に欠損が生じない見込みであれば支払われます。通常、中間決算(第2四半期決算)のタイミングで決定され、決算の2~3ヶ月後に受け取れます。
具体例
例えば、3月末決算の企業の場合:
期末配当:3月末決算→株主総会(5月~6月)→配当金支払い(5月~6月)
中間配当:9月末中間決算→取締役会決議(11月~12月)→配当金支払い(11月~12月)
配当金の決定プロセス
配当金の有無や金額は企業の業績に依存します。決算後に開かれる株主総会で以下のように決定されます。
- 業績確認:決算で企業の業績を確認します。
- 株主総会での議決:株主総会で取締役会が提案する配当金の金額について議決が行われます。
- 配当金支払い:議決で承認された場合、配当金が支払われます。
企業の配当方針や業績により、配当金は増減したり、場合によっては無配当となることもあります。また、業績が好転した企業は、配当金を増額したり、無配当から配当を出し始めることもあります。
配当利回りとは
配当利回りは、株主が株式を購入した時点の株価に対して、年間でどれだけの配当金を受け取れるかを示す指標です。これは株式投資において、どれくらいのリターンが期待できるかを予測するための重要な数値です。
例えば、1株あたりの配当金が20円で株価が1,000円であれば20円÷1,000円×100となり、配当利回りは2%となります。
株主が購入した時点の株価に対する配当金の割合を示しており、高い配当利回りは魅力的に見えることが多いですが、配当金や株価が変動する可能性があるため、注意が必要です。他の要素と併せて総合的に判断することで、より良い投資判断ができるでしょう。
配当性向とは?配当利回りとの違い
配当性向と配当利回りは、株主が投資を判断する際に重要な指標ですが、これらは異なる意味を持っています。
配当性向とは
配当性向は、企業の利益還元姿勢を示す指標です。高い配当性向は株主に多くの利益を還元することを意味し、魅力的に見えることが多いですが、成長のための投資が不足するリスクがあります。一方、低い配当性向は企業が利益を再投資している可能性があり、長期的な成長を期待できます。投資判断をする際には、配当性向の高さだけでなく、企業の成長戦略や財務状況を総合的に考慮することが重要です。
高配当だけで選んだ時のリスクとは
株価に対する配当金の割合が高い銘柄のことです。配当利回りが4%を超える銘柄が一般的に高配当株とされますが、この基準は厳密ではありません。配当利回りが高いほど、投資家は投資金額に対してより多くの配当金を受け取れる可能性があります。つまり、高配当株は投資家にとって配当収入が豊富であると見なされます。
高い配当利回りだからと言って、必ずしも「オトク」な投資対象とは限りません。なぜなら、高配当利回りの背後には潜在するリスクがあるからです。
例えば、配当利回りが高い銘柄があったとしても、その高い利回りが将来も続くかどうか、そしてそれが株価に反映されているかどうかはわかりません。もし株価が下がり続けている銘柄があれば、それは将来の業績悪化などによる配当金の減少が予想されている可能性があります。
投資家が注目すべき点は、配当利回りが高い銘柄を見つけたときに「なぜ株価が下がっているのか?」という疑問を持つことです。配当利回りが高いというだけでなく、その背景にあるリスクを考慮し、将来の業績や配当金の安定性を見極めることが重要です。
危険を伴うケース
業績不振の企業
企業があまり儲けが出ていない場合でも、配当金を高く設定することで配当利回りを上げることが可能です。しかし、このような企業は無理をして配当金を支払っている可能性が高く、長期的に見て安全ではありません。
株価が下がった場合
株価が下がると、配当利回りは自動的に上がります。これは、一見優良銘柄に見えることがありますが、実際には企業の経営が傾いていたり、不法行為に関与していたりする可能性があります。この場合、配当金が将来的に減額されたり無配になったりするリスクがあります。
倒産リスク
業績が悪化し続ける企業は、最終的には倒産するリスクもあります。倒産すれば、株式の価値はほぼゼロになり、投資した資金を失う可能性があります。
配当利回り以外もチェック
株式を購入する際には、配当利回りだけでなく、他の指標や企業の全体的な状況をチェックすることが重要です。
配当性向
配当性向は、企業が利益からどれだけを配当に回しているかを示す指標です。高すぎる配当性向は、企業が利益をほとんど配当に使っていることを意味し、将来的な投資余力が不足している可能性があります。
経営状態
企業の財務状況や収益力、成長戦略を確認しましょう。財務状況が健全で、収益が安定している企業は、配当金を継続的に支払う能力が高いです。
世間からの評判
企業の社会的な評判も重要です。評判の悪い企業は、長期的に見るとリスクが高いです。逆に、評判が良く、社会的責任を果たしている企業は、持続可能な成長が期待できます。
成長性
高成長を続ける企業は、将来の成長のために配当金を少額にしている場合があります。これらの企業は、成長投資を行うことで、長期的に株価が上昇する可能性があります。
株式投資を行う際には、配当利回りだけでなく、配当性向、経営状態、世間の評判など、多角的な情報を参考にすることが重要です。投資のリスクを十分に理解し、安全に取引を行うために、以下の点をしっかりとチェックしましょう。
- 配当利回りが高くても、その背後にある企業の業績や財務状況を確認する。
- 配当性向が適切かどうかを見極める。
- 企業の成長戦略や将来的な見通しを評価する。
- 社会的な評判や企業の信頼性をチェックする。
したがって、高配当利回りの銘柄が必ずしも投資価値があるとは限りません。将来の配当金の減少リスクを考慮し、総合的な分析を行うことが肝要です。
将来の可能性を見極める
配当利回りで銘柄を選ぶ際に意識すべき重要な点は、「将来の配当利回りが高くなる可能性」です。
現時点での配当利回りが高い銘柄は、将来的に配当金が減少するリスクが高く、その影響で株価が大きく下落する可能性も高いです。一方、現時点での配当利回りがそれほど高くない銘柄でも、過去に配当金が増加している傾向があれば、今後も配当金が増えていく可能性が高いと考えられます。
つまり、配当利回りが高いだけではなく、将来の配当増加の可能性を見極めることが重要です。現時点での利回りが2%程度でも、増配により将来的には10年後には4%になる可能性があるなら、その銘柄は投資価値があります。
高配当銘柄に飛びつくのではなく、将来的な配当の安定性や増加の可能性を考慮し、総合的な分析を行うことが大切です。
配当金の受け取り方法と税金について
株式投資を行う上で、配当金に関する知識は重要です。配当金を得る際に知っておきたいポイントと税金について、以下の3つを解説します。
配当金は課税対象
配当金は所得税と住民税の対象となります。そのため、全額を受け取ることはできません。
NISA口座で非課税
NISA口座で保管している株式の配当金は、所得税・住民税の課税対象外となります。ただし、一定の条件を満たす必要があります。
配当控除を受けるには確定申告が必要
配当控除を受けるためには、総合課税を選択し、確定申告を行う必要があります。
税金について
所得税・住民税の課税率: 配当金には所得税と住民税が課せられます。所得税・復興特別所得税の税率は15.315%、住民税の税率は5%です。合計すると20.315%となります。
- 非課税の条件: NISA口座で株式を取得・保管している場合に、配当金が非課税となります。ただし、株式数比例配分方式を選択している必要があります。
- 配当控除の適用: 配当控除を受けるためには、総合課税を選択し、確定申告を行う必要があります。ただし、確定申告が不要な源泉徴収ありの特定口座の場合でも、配当控除を適用することができます。
配当金を得る際には、これらのポイントを理解しておくことが大切です。税金の取り扱いや配当控除の適用条件を把握し、投資を行う上での計画を立てましょう。
まとめ
配当金とは
配当金は、企業が株主に利益の一部を支払うために支払う金額です。これは企業の利益から計算され、株主に対して株式の保有割合に応じて支払われます。配当金は通常、定期的な支払いとして行われ、株主が会社の業績に応じて利益を共有する手段の1つです。
配当利回りとは
配当利回りは、株主が株を購入した時点の株価に対して、年間で受け取れる配当金の割合を示す指標です。計算式は、年間の配当金を株価で割り、その結果に100を掛けることで求めることができます。例えば、株価が100ドルで年間の配当金が5ドルの場合、配当利回りは5%となります。
配当利回りだけでの銘柄選びは危険
配当利回りだけで銘柄を選ぶのは危険です。なぜなら、高い配当利回りはしばしば業績の悪化や将来の成長に対する企業の不安定性を反映する場合があるからです。業績不振や将来の配当減少の可能性がある企業に投資することは、投資家にとって大きなリスクとなります。したがって、配当利回りだけでなく、企業の業績、財務状況、成長戦略などを総合的に分析することが重要です。
配当金の受け取り方と税金について
配当金は、株主が保有する株式の数に応じて支払われます。この配当金は、所得税と住民税の対象となります。税率は所得税・復興特別所得税が15.315%、住民税が5%で、合計すると20.315%となります。ただし、NISA(少額投資非課税制度)口座で保管している株式の配当金は、所得税と住民税の課税対象外となります。また、配当控除を受けるには、総合課税を選択し、確定申告を行う必要があります。
最後に
高配当株は投資家にとって魅力的に見えるかもしれませんが、その裏には様々なリスクが潜んでいます。配当利回りだけで銘柄を選ぶことは危険であり、業績不振や将来の成長見通しの不安定な企業に投資することは損失を招く可能性があります。配当利回りに基づく投資判断を行う際には、配当利回りだけでなく、企業の業績、財務状況、成長戦略などを総合的に分析し、将来の可能性を見極めることが重要です。また、配当金の受け取り方や税金についても理解し、投資を行う上での計画を立てることが肝要です。投資はリスクが伴うものであり、十分な情報収集と検討を行うことが賢明です。