先物取引とは?初心者向けの基礎知識と注意点
先物取引は将来の価格変動を予測して利益を狙う投資手法ですが、初心者にとっては複雑な部分もあります。取引を始める前に知っておきたい注意点や悩みを理解して、リスクを管理しながら取引を行うことが大切です。
初心者が悩むポイントは次のようなものです。
- どこから始めればいいか:先物取引の基本的な知識や手続きの流れを知ることが必要です。
- リスクあるの?:レバレッジ取引による損失リスクをどうやって抑えるかが大事です。
- 証拠金って何?:必要な証拠金や追加証拠金の必要性について理解しましょう。
- 反対売買のやり方とは?:先物取引には期限があるため、期限内に取引を終える必要があります。
これらのポイントを押さえて、少額から始め、慎重に経験を積むことで、先物取引を効果的に進めることができます。次に、先物取引の注意点とリスク管理について詳しく説明しますので、参考にしてください。
先物取引とは
先物取引は、将来の特定の期日に特定の商品や金融資産を、あらかじめ定めた価格で売買する契約を結ぶ取引方法です。この取引の際に決定されるのは、商品や資産の種類、価格、数量、そして取引の期日です。
通常の取引では、売買の際に市場価格(時価)で売り買いされますが、先物取引では事前に定めた価格で取引が行われます。つまり、事前に合意した価格で将来の期日に売買するため、市場価格が大きく変動しても、契約した価格で売買されるのが特徴です。このため、価格変動リスクを避けることができるメリットがあります。
証拠金という担保金を差し入れることで、証拠金以上の大きな額で取引を行うことができます。また、先物取引では、反対売買を行って決済を行う差金決済が原則です。例えば、先物契約を買った後に売るか、売った後に買うことで、現物を受け取らずに利益や損失を確定します。ただし、商品先物では現物を受け渡す形で決済することもあります。
先物取引は、大きく分けて「商品先物」と「金融先物」の2種類があります。
商品先物
商品先物は、原油、金、貴金属、トウモロコシなどの農作物など、実物の商品の将来の価格を予測して取引するものです。
金融先物
金融先物は、株式や債券など金融商品を対象とした先物取引で、次の4種類の取引があります。
- 株式指数先物取引: 日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの株式指数を対象とした取引です。
- 債券先物取引: 中期国債や長期国債などの債券を対象とした取引です。
- 通貨先物取引: 外国通貨を対象とした取引です。
- 金利先物取引: 金利を対象とした取引です。
先物取引は、日本国内では主に大阪取引所と東京商品取引所で行われています。
大阪取引所では、日経平均先物や債券先物など、金融先物がすべて取引され、東京商品取引所では、原油などのエネルギー商品や他の実物商品が取引されています。
先物取引の仕組みについて
先物取引の仕組みは、将来の期日にあらかじめ定めた価格で特定の商品や金融資産の売買を行う契約です。株式指数先物取引を例にとって、先物取引のポイントを分かりやすく解説します。
取引期間が決まっている
- 取引できる期間はあらかじめ決まっており、その期間を「限月」と言います。
- 株式指数先物取引の日経平均先物では、限月は3月、6月、9月、12月の3ヶ月ごとです。
- 期間内はいつでも取引が可能で、満期を迎えると自動的に決済されます。
差金決済
- 先物取引の決済方法は差金決済です。これは、売買によって生じた差額のみの受け渡しを行うことを意味します。
- 現物の受け渡しはなく、利益や損失は差額によって決まります。
証拠金が必要
- 先物取引を行うには証拠金(担保)が必要です。
- レバレッジ効果により、証拠金より大きな額で取引が可能です。
「売り」から入ることもできる
- 相場が下落すると予想する場合、「売り」から取引を始めることができます。
- 「売り」から始めた場合、相場が下落すると「買い戻し」することで利益が得られます。
- 逆に相場が予想に反して上昇した場合は損失が発生します。
反対売買または満期で自動決済
- 期間中は反対売買(購入した先物を売る、売った先物を買い戻す)で決済が可能です。
- 取引最終日まで反対売買をしなかった場合、満期日(最終日)に自動的に決済されます。
日経平均先物取引の種類
日経225先物取引は、日本の株式市場を代表する日経平均株価を対象とした先物取引のことです。主に3種類の取引単位があります。一般的に日経平均先物と言った場合にはラージを指します。
日経225先物取引の種類
ラージ
- 最低取引単位は「日経平均株価指数 × 1,000倍」。
- 大口投資家向けの取引です。
ミニ
- 最低取引単位は「日経平均株価指数 × 100倍」。
- ラージの10分の1の取引単位で、比較的始めやすいです。
マイクロ
- 最低取引単位は「日経平均株価指数 × 10倍」。
- ラージの100分の1の取引単位で、個人投資家が少額から取引を始めるのに適しています。
日経平均先物取引の例
取引の内容
日経平均先物を2万8000円で1枚買ったとします。
1枚の取引単位は「日経平均株価指数×1,000倍」なので、取引の金額は2万8000円 × 1,000 = 2,800万円になります。
価格変動と決済
取引期間中に日経平均が2万8500円まで値上がりしたため、購入価格より500円上昇しました。
このため、反対売買(買ったものを売ること)で決済しました。
利益は価格の差額に基づいて計算されます。
(2万8500円 – 2万8000円)× 1,000 = 50万円
つまり、50万円の利益です。
損失の場合
取引期間中に日経平均が2万7500円まで値下がりした場合、購入価格より500円下がったことになります。
反対売買で決済した場合、損失は価格の差額に基づいて計算されます。
(2万7500円 – 2万8000円)× 1,000 = -50万円
50万円の損失です。
商品先物取引の例:原油購入の流れ
- 取引日:3月31日
- 満期日:9月30日
- 商品:原油50キロリットルを購入
- 価格:5万円/1キロリットル
- 取引証拠金:25万円
この場合、合計250万円(50キロリットル×5万円/キロリットル)で原油を購入する契約を3月31日に結びます。しかし、先物取引では取引の際に全額の250万円を支払う必要はなく、25万円の証拠金だけを預託します。満期日である9月30日になった際、価格変動に関わらず取引時の契約価格で250万円の原油を購入します。
原油価格が値上がりした場合
3月31日の契約価格:250万円(5万円/キロリットル × 50キロリットル)
9月30日の市場価格:300万円(6万円/キロリットル × 50キロリットル)
この場合、市場価格が300万円に値上がりしていますが、取引時に決めた価格で250万円で購入できます。
そのため、50万円の利益が得られます。
原油価格が値下がりした場合
3月31日の契約価格:250万円(5万円/キロリットル × 50キロリットル)
9月30日の市場価格:200万円(4万円/キロリットル × 50キロリットル)
この場合、市場価格が200万円に値下がりしていますが、取引時に決めた価格で250万円で購入します。そのため、50万円の損失が発生します。
先物取引の基本ルール
売買方向の選択
- 買いから始める:相場が上昇すると予想すれば、「買い」から取引を始めます。
- 売りから始める:相場が下落すると予想すれば、「売り」から取引を始めます。
反対売買での決済
買い建てたポジションは「売り」で、売り建てたポジションは「買い」で、反対売買を行って決済します。決済によって利益または損失が確定します。
満期日に自動決済
取引最終日まで反対売買しなかった場合、満期日に特別清算指数(SQ値)で自動的に決済されます。
リスクと管理
先物取引は価格変動によって利益や損失が生じるため、リスクを適切に管理することが重要です。
このように、日経平均先物取引は価格の変動に基づいて差額で損益が確定します。取引の方向性(買い・売り)やリスク管理をしっかり考慮しながら取引を行うことが大切です。
先物取引のメリット
先物取引にはさまざまなメリットがあり、投資家や企業が利用する理由があります。ここでは、先物取引のメリットについて具体的に解説します。
少額の資金から取引ができる
- レバレッジ効果: 先物取引は証拠金を差し入れることで、証拠金の数倍から20倍の取引が可能です。少額の資金で大きな取引ができ、効率的な資金運用ができます。
- 証拠金取引: 日経平均先物では、日経平均株価指数を1000倍した金額が最低取引単位(1枚)です。例えば、2万8000円の日経平均株価なら1枚当たりの約定代金は2800万円ですが、証拠金はその一部のみです。証拠金は証券会社によって異なるため、確認が必要です。
銘柄選択が必要ない
- 指数に基づく取引: 金融先物取引では、株価指数や商品指数などが対象となるため、個別銘柄の分析・選定が不要です。相場全体の動きを見ながら取引ができます。
- 選択肢が限定的: 先物取引の対象商品は限られているため、選択肢が絞られており、判断がしやすい点もメリットです。
売り買いどちらからでも取引できる
- 先物取引では、買いからだけでなく、売りから入ることもできます。相場が下落する局面でも利益を上げることができるため、柔軟な投資戦略を立てられます。
短期間で利益を生み出せる
- 必要な証拠金は想定元本の数分の1から数十分の1程度です。少ない資金でレバレッジを効かせた取引を行うことで、短期間で大きな利益を生み出すことができます。
価格変動リスクを軽減できる
- 価格の確定: 先物取引では、将来の取引価格を事前に決めておくため、価格変動リスクを軽減できます。たとえば、10万円で購入する契約をした場合、相場が変動しても支払う金額は10万円に確定します。
- リスクヘッジ: 生産者や実需家にとっては、価格変動リスクを軽減し、計画的な供給や仕入れが可能となります。
以上のように、先物取引にはさまざまなメリットがあります。レバレッジ効果や相場の上下に対応できる柔軟性、価格変動リスクの軽減などが、先物取引の魅力と言えます。しかし、リスクもあるため、事前の知識や計画的な運用が必要です。
先物取引の注意点
先物取引にはさまざまなリスクが伴いますので、注意が必要です。以下に、先物取引で気をつけたいリスクについて説明します。
損失が大きく膨らむ可能性がある
- レバレッジのリスク: レバレッジ取引は少ない証拠金で大きな取引ができる一方で、相場が予想とは逆に動いた場合には、予想以上の損失が生じるリスクがあります。
- 急激な価格変動: 市場の価格変動が激しい場合、一時的な急激な変動で予想外の損失が生じることもあります。
追加の証拠金を差し入れる場合がある
- 追証リスク: 想定と異なる方向に相場が動いた場合、証拠金が不足し、追加の証拠金(追証)が必要となることがあります。
- 資金管理: 十分な余裕資金を持ち、追証が発生した際に対応できるようにしておく必要があります。
元本及び利益が保証されない
- 市場変動リスク: 株式などと同様に、先物取引も市場の値動きに左右され、元本や利益が保証されたものではありません。
- リスク評価: 取引前にしっかりとリスクを評価し、予想に反する事態にも対処できるような取引計画を立てることが大切です。
長期間保有ができない
- 限月リスク: 先物取引には期限(限月)があり、長期間保有できません。期日までに反対売買を行わなければ、満期日に自動決済されます。
- 期日管理: 取引期間をしっかりと把握し、期日内に適切な取引を行うことが重要です。
先物取引の準備と流れ
先物取引の流れや取引開始にあたっての準備、発注方法について説明します。
先物取引の流れ
契約成立:
- 先物取引は買い手と売り手の双方で契約が成立します。
- 契約成立時には金銭の受け渡しは行いません。将来の一定期間に決済を行う契約を結びます。
決済方法:
- 満期前に決済する場合は、反対売買(買っているものを売る、または売っているものを買い戻す)により転売や買戻しができます。
- 満期まで反対売買を行わなかった場合は、満期日に自動的に反対売買され、損益が確定します。
先物取引開始の準備
口座開設:
先物取引を開始するには、まず証券会社に先物・オプション取引口座の開設を申し込む必要があります。
書類の記入と返送:
証券会社から送られてきた書類に必要事項を記入して返送します。
審査と口座開設:
証券会社の審査を経て、先物・オプション取引口座が開設されます。
証拠金の預け入れ:
取引に必要な証拠金を口座に預け入れます。
発注方法
先物取引の発注方法は、証券会社に以下の情報を伝えるだけです。
- 銘柄: 取引したい商品の名前や種類を指定します。
- 売りか買いか: 価格が上がると思えば「買い」、下がると思えば「売り」を選びます。
- 数量: 取引したい数量を指定します。
- 注文種類: 市場価格で即時取引する「成行注文」や、指定した価格で取引する「指値注文」などがあります。
- 注文条件: 有効期限や取引成立の条件を指定します。
発注後の決済方法は2種類です。
- 反対売買: 先に「買い」をしていれば「転売」、先に「売り」をしていれば「買戻し」で決済します。
- 満期日決済: 取引最終日まで反対売買を行わない場合、満期日に自動的に決済されます。
以上が、先物取引の流れや開始時の準備、発注方法です。特にリスク管理を意識して、余裕を持った取引を行うようにしましょう。
まとめ
先物取引とは
先物取引とは、将来の一定の期日に、あらかじめ決められた価格で、指定された商品や金融商品を売買する契約をする取引のことです。現在の価格を固定することで、将来の価格変動に対するリスクを軽減したり、投資家は相場の動きに応じて利益を狙ったりすることができます。
先物取引の種類
先物取引は大きく分けて「商品先物」と「金融先物」の2種類があります。
- 商品先物: 商品(例: 原油、金、大豆、小麦など)の将来の価格を決めて売買する契約です。農作物やエネルギー資源、金属などの価格変動リスクを軽減するために利用されます。
- 金融先物: 株価指数や金利、通貨などの金融商品を対象とした先物取引です。日経平均株価を対象とした「日経225先物」や、米ドルを対象とした「米ドル先物」などがあります。
先物取引のメリット
- レバレッジ効果: 証拠金(保証金)を差し入れることで、証拠金の何倍もの取引ができます。少額の資金で大きな利益を狙うことが可能です。
- 売り買いどちらからも始められる: 上昇相場では「買い」、下落相場では「売り」から始められるため、相場のどちらの方向にも対応できます。
- 価格変動リスクを軽減できる: 先物取引を利用することで、将来の価格変動リスクを回避できます。企業や生産者は価格変動リスクをヘッジするために活用します。
先物取引の注意点
- 損失が大きく膨らむ可能性: レバレッジ取引は大きな利益を狙える一方、大きな損失を被るリスクもあります。追加の証拠金が必要になる場合もあるため、注意が必要です。
- 元本および利益の保証はない: 先物取引は値動きがあるため、元本や利益が保証されません。投資にはリスクが伴います。
- 長期間保有ができない: 先物取引には期日があり、期日までに反対売買を行わなければなりません。
先物取引の手続き
先物取引を行うには、以下の手順が必要です。
- 口座の開設: 証券会社で先物・オプション取引口座を開設します。申込みには、証券会社が指定する書類の記入・返送が必要です。
- 審査の通過: 申請内容の審査が行われ、問題がなければ口座が開設されます。
- 証拠金の預け入れ: 取引に必要な証拠金を口座に預け入れます。
- 発注: 銘柄や数量、注文方法(成行注文や指値注文)などを決めて発注します。
- 決済: 満期前に反対売買を行い、ポジションを解消するか、満期日を迎え自動決済されます。
最後に
先物取引は、価格変動の可能性を活用して利益を追求できる魅力的な投資手法です。しかし、初心者にとってはレバレッジ取引のリスクや期限内の取引の必要性など、注意すべきポイントがいくつかあります。
悩みを解決するためには、しっかりとリスク管理を行い、慎重に取引に取り組むことが重要です。少額から始めて経験を積むことで、自信を持って先物取引を行うことができるでしょう。
また、証券会社や専門家のサポートを活用して、最新の情報やアドバイスを得ることも有効です。将来の価格変動を予測して利益を追求する一方で、リスクを最小限に抑えるための対策を怠らないようにしましょう。
最終的には、先物取引を楽しみながら学び、成長していくことで、投資の世界で成功することができます。